施設のパンフレットで「ユニット型個室」という言葉を見て、「従来型より高いけど、何が違うの?」と迷っていませんか。
答えを先にお伝えします。ユニットケアとは、10人ほどの小さなグループ(ユニット)ごとに、個室とリビングを囲んで暮らす介護の形です。違いは部屋のつくりだけではありません。ケアの受け方そのものが変わります。
私はユニット型の老健で働き、国のカリキュラムに沿ったユニットリーダー研修を修了しました。この記事では、従来型との違いと費用差に加えて、「ユニット型なのに理念どおりではない施設」を中から見てきた立場から、良い施設の見分け方まで正直にお伝えします。
ユニットケアとは?——10人の「小さな家」で暮らす仕組み
ユニット型の施設では、入居者を10人以下のグループに分けます。このグループが「ユニット」です。
ひとりずつ個室があり、部屋を出るとすぐに共用のリビング(共同生活室)があります。食事も団らんも、このリビングで。大きな施設の中に、10人の「小さな家」がいくつも入っている——そんなイメージです。
スタッフもユニットごとに担当が決まっています。毎日同じ顔ぶれのスタッフがケアをするので、「この人は朝が苦手」「食事はゆっくり派」といった一人ひとりの暮らしぶりが、自然と共有されていきます。
従来型と何が違う?比較表で整理
| ユニット型 | 従来型 | |
|---|---|---|
| 部屋 | 個室 | 多床室(2〜4人部屋)が中心 |
| 食事の場所 | ユニットのリビング(10人前後) | 大きな食堂にみんなで集まる |
| スタッフ | ユニット専属。なじみの関係ができる | フロア全体を交代で担当 |
| 生活のリズム | 一人ひとりに合わせるのが基本 | 起床・食事など施設の時間割が中心 |
| 費用(居住費) | 高い(個室代がかかる) | 安い |
ひとことで言うと、従来型は「施設の時間に人が合わせる」、ユニット型は「人の暮らしに施設が合わせる」を目指す形です。
理念は「その人らしい暮らしの継続」——研修で学んだこと
ユニットリーダー研修で最初に教わるのは、ユニットケアの理念です。それは「その人らしい暮らしの継続」。施設に入っても、家で続けてきた暮らし方をなるべく変えない、という考え方です。
たとえば、朝5時に起きる習慣の人は5時に起きていい。朝食をゆっくり9時に食べたい人は、そうできるように組み立てる。従来型の「6時半に一斉起床、7時半に一斉朝食」とは、発想が逆なんです。
個室であることも、この理念とつながっています。使い慣れたタンスや仏壇、家族の写真を持ち込んで、自分の部屋を「家の続き」にできる。プライバシーが守られるので、家族が気兼ねなく面会に来られるのも個室の良さです。
正直に書きます——ユニット型でも、理念どおりとは限らない
ここからは、現場にいた人間として正直に書きます。私が働いていた施設はユニット型でしたが、「その人らしい暮らしの継続」が実践されているとは言えませんでした。
建物は個室でリビングもある。でも中身は、決まった時間の一斉ケアのまま。研修で学んだ理念と現場の毎日のあいだには、大きな距離がありました。人手が足りないなかでは、理念より「今日を回すこと」が優先されてしまう——それが現実として起きます。
これは働く側の努力だけの問題ではなく、施設の運営の姿勢によるところが大きいと感じています。だからこそ伝えたいのは、「ユニット型」という看板はケアの中身を保証しないということです。
費用の差——月3〜4万円高い。その価値はある?
ユニット型が従来型より高くなるのは、主に「居住費(部屋代)」です。特養の場合、多床室とユニット型個室では月におよそ3〜4万円の差が出ます(執筆時点の目安です。金額は施設・地域で変わるため、必ず施設や自治体にご確認ください)。
ここで知っておいてほしいのが、負担限度額認定という軽減制度です。所得や資産が一定以下の方は、申請すると居住費と食費が安くなります。「ユニット型は高いから無理」とあきらめる前に、まず市区町村の窓口かケアマネジャーに確認してみてください。
そのうえで、価値があるかどうか。私の考えは、「本人がどんな暮らしを大事にしてきたか」で決まるです。
- ユニット型が向く人:自分の時間やプライバシーを大事にしてきた人。生活のこだわり(起きる時間・持ち物など)がはっきりある人
- 従来型でも十分な人:にぎやかな場所が好きで、人と一緒にいるほうが安心する人。費用を抑えて長く入居したい場合
従来型が劣っているわけではありません。多床室のほうが人の気配があって落ち着く、という方も実際にいます。
施設ごとの費用の全体像は、こちらの記事にまとめています。→ 老人ホームの費用相場——月額いくらかかる?
見学でここを見る——「本物のユニットケア」の見分け方
ユニット型を検討するなら、見学で次の4つを見てください。私のように「看板と中身が違う施設」を知っている人間から見て、ここに差が出ます。
- リビングに生活感があるか——入居者が思い思いに過ごしているか。全員が同じ方向を向いてテレビの前に並んでいるだけなら、中身は一斉ケアかもしれません
- 個室に私物があるか——見学で個室を見せてもらえたら、家具や写真が持ち込まれているか見てください。「家の続き」になっているかのサインです
- 食事の時間に幅があるか——「朝食は何時ですか」と聞いてみて、「◯時一斉です」か「その方のペースに合わせます」かで、理念の浸透度がわかります
- 施設の理念を、現場のスタッフに聞いてみる——「この施設が大事にしていることは何ですか」とケアスタッフに聞いて、自分の言葉で答えが返ってくるか。パンフレットの言葉と現場が一致している施設は、それだけで信頼できます
見学全体のチェックリストは、こちらの記事でくわしく書いています。→ 施設見学でチェックすべきポイント
まとめ
- ユニットケアは、10人ほどの「小さな家」で暮らす介護の形。理念は「その人らしい暮らしの継続」
- 従来型との費用差は月3〜4万円が目安。負担限度額認定で軽減できる場合がある
- 「ユニット型」の看板はケアの中身を保証しない。施設の理念が現場と一致しているかを、見学で確かめる
ユニット型か従来型かは、「どちらが良い施設か」ではなく「本人がどう暮らしてきたか」で選ぶものです。まずは両方のタイプの資料を取り寄せて、比べるところから始めてみてください。