親の施設入居が決まって、「持ち物リストをもらったけど、実際どう準備すればいいの?」と迷っていませんか。
施設からもらう持ち物リストには「衣類一式」「タオル」などと書いてありますが、大事なのは"何を"より"どう準備するか"です。私は老健(介護老人保健施設)で働いていました。この記事では、現場のスタッフとして「家族にこうしてほしかった」と本気で思っていたことを、正直にお伝えします。ちょっとした工夫で、本人も、家族も、そして現場もぐっと楽になります。
いちばん大事なのは「名前つけ」——ただし、大きく・見やすく
持ち物すべてに名前を書く。これは基本中の基本です。でも、現場で本当に困っていたのは、「名前は書いてあるけど、読めない」ケースでした。
よくあるのが、服の内側の製品表示タグ(洗濯表示の札)に小さく書いてあるパターン。これ、実は落とし穴だらけなんです。
- 洗濯を何度も繰り返すうちに、タグが丸まって読めなくなる
- インクが薄くなり、だんだん消えてしまう
- そもそも文字が小さく、目の悪いご本人には見えない
施設では大量の洗濯物を扱います。名前が読めないと、誰のものかわからなくなり、探すのに時間がかかります。だから、お願いしたいのはこれです。
- とにかく大きく書く。小さい字はNG
- 見えやすい場所に。タグの中ではなく、襟の後ろや裾など、パッと目に入る位置
- 洗濯で消えにくいお名前スタンプ・アイロンシール・お名前テープが便利。手書きなら濃く、大きく
- ご本人自身が「自分のもの」とわかる大きさだと、なお良い
地味な作業ですが、ここを丁寧にやるかどうかで、そのあとの紛失トラブルが大きく変わります。
「紛失」は、悪気なく起こる
もうひとつ、家族に知っておいてほしい現場のリアルがあります。施設には、いろいろな方が暮らしています。認知症のある方の中には、悪気なく、人のものを自分のものだと思ってしまい込んでしまうことがあるんです。
これは誰が悪いという話ではありません。だからこそ、名前がはっきり大きく書いてあることが、いちばんの予防策になります。見つかったときに「これは○○さんのだ」とすぐわかれば、戻ってきます。
洋服選びのコツ——スナップ・前開き・少し大きめ
着るものは、毎日のこと。ここも選び方ひとつで、本人の快適さと、着替えのしやすさが変わります。現場の実感から、3つのポイントをお伝えします。
① マジックテープより「スナップ(パチンと留める)」
マジックテープは便利そうに見えますが、洗濯を繰り返すと粘着力がすぐ落ちて、留まらなくなります。おすすめは、パチンと留めるスナップボタン。長持ちして、着脱もスムーズです。
② できれば「前開き」
頭からかぶるタイプの服は、腕や首が上がりにくい方には、着せるのも脱がせるのも大変です。前開き(ボタンやスナップで前が全部開く)だと、身体に負担をかけずに着替えができます。
③ サイズは「少し大きめ」
ぴったりサイズより、少しゆとりのある大きめを。本人が動きやすいのはもちろん、着脱を介助する側にとっても、大きめのほうが断然やりやすいんです。ズボンはウエストがゴムのものだと、さらに楽になります。
- 留め具はスナップ(マジックテープは避ける)
- 前開きで、頭からかぶらないもの
- サイズは少し大きめ、ズボンはウエストゴム
- 洗濯機・乾燥機で気軽に洗える素材(デリケートな手洗い品は避ける)
ほかに、あると助かるもの・確認したいこと
- 靴・上履き:かかとのある、脱げにくいもの。転倒予防になります
- 下着・靴下は多めに:洗濯が追いつかないことも。少し多めが安心です
- 口腔ケア用品:歯ブラシ、入れ歯ケース、コップなど。入れ歯にも名前を
- 眼鏡・補聴器:ケースにも名前を。予備があるとなお安心
- 本人が安心できる私物:使い慣れたひざ掛け、家族の写真など。慣れない環境で心の支えになります(ただし高価でないもの)
まとめ
- 名前つけは大きく・見えやすい場所に。製品表示タグは消えるのでNG
- 紛失は悪気なく起こる。だから名前が最大の予防策。高価な物は持ち込まない
- 服はスナップ・前開き・少し大きめ。着る側も介助する側も楽になる
- 持ち物のルールは施設ごとに違う。入居前に相談員へ確認を
入居の準備は、やることが多くて大変です。でも、こうした小さな工夫のひとつひとつが、離れて暮らす親御さんの毎日を、少しずつ守ってくれます。無理のない範囲で、できることから準備してみてください。