自宅で食事の支度を手伝うヘルパーのイラスト

「ヘルパーさんが来てくれる日だから、ついでにお風呂も入れてもらおう」——そう思って頼んだら、断られた。

なぜだろう、冷たいな、と感じた方もいるかもしれません。

答えを先にお伝えします。ヘルパーができるのは、ケアプランに書かれていることだけです。その場の判断で増やすことができません。

わたしは訪問介護で働いていました。断る側にいた人間として、なぜそうなるのかを正直に書きます。あわせて、頼みたいことがあるときにどうすればいいかもお伝えします。

まず、頼めること

訪問介護は大きく2つに分かれます。

身体介護入浴・排泄・食事の介助、着替え、体位の交換、通院の付き添いなど
体に直接ふれる支援
生活援助掃除、洗濯、調理、買い物など
本人が自分でできない家事

サービス内容や利用の流れは訪問介護とは?にまとめています。

頼めないこと① 本人以外のための家事

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介護保険は「本人のため」のサービスです 家族の分の食事を作る、家族の洗濯物をたたむ、本人が使わない部屋を掃除する——これらはできません。同居のご家族がいる場合、そもそも生活援助が使えないこともあります。

「どうせ作るなら2人分でいいのに」と思われるかもしれません。でも介護保険は本人の自立を支えるためのお金です。ここは制度としてはっきり決まっています。

頼めないこと② 日常生活の範囲を超えること

掃除はできるのに大掃除はできない。この線引きは分かりにくいと思います。目安は「その人が元気だったころ、毎日・毎週やっていたことかどうか」です。

頼めないこと③ 医療行為

ここは法律で決まっています。ヘルパーは医療行為ができません。

ヘルパーができることできないこと(看護師・医師の領域)
体温・血圧を測るインスリン注射
軽い切り傷・すり傷の手当て床ずれ(褥瘡)の処置
湿布を貼る、軟膏を塗る点滴・カテーテルの管理
目薬をさす、座薬を入れる痰の吸引(研修を受けた職員は可)
一包化された薬を飲むのを手伝う薬の仕分け・量の判断
爪を切る(※条件あり)巻き爪・炎症がある爪、糖尿病などで管理が必要な爪

爪切りは「できる」ですが、爪の周りに化膿や炎症がなく、専門的な管理が必要でない場合に限るとされています。ヘルパーが「これは切れません」と言ったときは、意地悪ではなく、本当に切れない爪だと思ってください。

頼めないこと④ ケアプランに書かれていないこと

そして、いちばん多いのがこれです。

⚠️
「今日ちょっとだけ」が、通らない理由 訪問介護はケアマネジャーが作ったケアプランにもとづいて動いています。「今日は掃除」と決まっている日に、その場で「お風呂に入れて」と言われても、できません。 時間もサービスの内容も、あらかじめ決まっているからです。

現場にいたころ、上司からはこう言われていました。「介護保険でできる範囲でやること。できないことは断ること」

正直に書きます。これでいいのかな、と思うことはありました。 目の前に困っている人がいるのに、決まりだからと断る。気持ちのいいものではありません。

💡
「前の人はやってくれたのに」が、いちばんつらい 線を引くのが難しい場面は、確かにあります。でも一人が「これくらいなら」と応じると、次の担当者が困ります「前の人はやってくれたのに」——そう言われて、きちんと決まりを守っている人のほうが悪く見えてしまう。現場では、これがいちばん難しいところでした。 ヘルパーが断るのは、冷たいからではありません。次に来る人のためでもあります。

頼みたいことがあるときは、ケアマネさんへ

では、どうすればいいのか。答えはシンプルです。

ヘルパーに直接お願いするのではなく、ケアマネジャーに伝えてください。

ケアプランは、変えられます 「最近ひとりでお風呂に入るのが難しくなってきた」と伝えれば、入浴介助をプランに入れられないか検討してもらえます。 ヘルパーには決める権限がありませんが、ケアマネジャーには調整する役割があります。頼む相手が違うだけなんです。

言いにくいと感じる方が多いのですが、これはケアマネジャーの仕事です。遠慮なく相談してください(ケアマネさんとの付き合い方)。

医療が必要なら「訪問看護」という選択肢

ヘルパーにできない医療的なことは、訪問看護で頼めます。看護師が自宅に来てくれるサービスです。

訪問介護訪問看護
来る人ヘルパー(介護職)看護師・保健師など
できること入浴・排泄・食事の介助、掃除・調理など床ずれの処置、点滴、カテーテル管理、痰の吸引、健康状態の観察
必要なものケアプラン主治医の指示書

訪問看護を使うには主治医の指示書が要ります。まずはケアマネジャーか主治医に相談してください。

現場では、訪問看護の方と顔を合わせることはあまりありませんでした。入れ違いになることはあっても、たいていは連絡ノートで様子を申し送りしていました。ヘルパーと看護師は、そうやって同じ人を支えています。

まとめ

断られると、突き放されたように感じるかもしれません。でも多くのヘルパーは、決まりと目の前の困りごとのあいだで、迷いながら線を引いています。伝える相手を変えるだけで、できるようになることもあります。

※制度の内容は執筆時点(2026年8月)のものです。実際に受けられるサービスは、お住まいの市区町村や事業所によって異なります。担当のケアマネジャーにご確認ください。

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